相続した実家を売却する流れ

相続した実家を売るときは、住んでいた家を売る場合と少し勝手が違います。いちばんの違いは、先に親から相続人へ名義を変える手順が必要なこと。ここを飛ばすと、そもそも売買契約に進めません。

この記事では、相続した実家を売却するまでの7つの手順を軸に、必要書類やかかる期間・費用、そして知っておきたい税金の特例と譲渡所得税の計算までを順番に見ていきます。
全体像がつかめれば、どこを専門家に頼み、どこを自分で進めればよいかの見通しが立つはずです。

目次

相続した実家を売却するまでの流れ(7手順)

  1. 遺言の有無・相続人・遺産を確認する
  2. 遺産分割協議で「誰が相続し、どう分けるか」を決める
  3. 相続登記で名義を相続人に変更する
  4. 不動産査定で相場を把握する
  5. 不動産会社と媒介契約を結び、売却活動を始める
  6. 買主と売買契約を結び、引き渡す
  7. 翌年に譲渡所得税を確定申告する

全体でどのくらいかかるのか、まずは期間の目安をつかんでおきましょう。

段階期間の目安主にやること
相続人・遺産の確認〜遺産分割協議1〜3か月戸籍収集、相続人の話し合い
相続登記(名義変更)2週間〜2か月書類準備、法務局へ申請
査定〜媒介契約〜売却活動3〜6か月価格査定、広告、内見対応
売買契約〜決済・引き渡し1〜2か月契約、残置物撤去、引き渡し
譲渡所得税の確定申告売却した翌年の2〜3月確定申告、特例の適用

期間はあくまで目安で、相続人の人数や書類の揃い方、買い手が付くまでの時間で前後します。
着手から売却完了まで、全体で半年〜1年程度を見込んでおくと安心でしょう。

STEP1|相続人と遺産を確認する

まずは遺言書があるかを確認し、亡くなった方(被相続人)の戸籍をたどって相続人を確定します。あわせて、実家の登記事項証明書で名義や権利関係もチェックしておきましょう。

ここで把握していなかった相続人(前婚の子など)が判明することも、実は珍しくありません。
後の協議に大きく影響するため、戸籍は「出生から死亡まで」もれなくたどるのが基本です。

STEP2|遺産分割協議で相続人の合意をとる

相続人が複数いる場合は、誰が家を相続し、どう分けるかを遺産分割協議で決め、遺産分割協議書にまとめます。全員の合意と、実印・印鑑証明が必要です。
実家のように分けにくい不動産には、主に次の3つの分け方があります。

  • 換価分割:家を売って、得た現金を相続人で分ける。売却が前提のケースで最も多い方法。
  • 代償分割:一人が家を相続し、他の相続人へその分の金銭(代償金)を支払う。誰かが住み続ける場合など。
  • 現物分割:不動産はそのまま一人が取得し、預貯金など他の財産を別の人が取得する。

売却して分けるなら、基本は換価分割です。
ただし兄弟姉妹で意見が割れると、この段階で手続きが止まりがち。方針が固まらないうちは、無理に売却を進めないほうが安全です。意見が合わないときの整理法は兄弟姉妹で実家の意見が合わないときもあわせてご覧ください。

STEP3|相続登記で名義を変える(2024年から義務化)

不動産を売れるのは名義人だけ。相続した家は、相続登記で親から相続人へ名義を変えておく必要があります。

2024年4月からは相続登記が義務化されました。相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請が必要で、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になり得ます。過去に相続した未登記の不動産も対象です。
登記は司法書士に依頼するのが一般的で、登録免許税(固定資産税評価額の0.4%)のほかに司法書士報酬がかかります。

相続登記・売却で必要になる主な書類

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の印鑑証明書、住民票
  • 遺産分割協議書
  • 対象不動産の登記事項証明書、固定資産評価証明書
  • 権利証(登記識別情報)※売却時

STEP4|査定で相場を知る

名義と方針が整ったら、いくらで売れそうかを把握します。1社だけでは相場が分からないため、複数社の一括査定で価格を比較するのが基本です。

見るべきは金額だけではありません。担当者の説明の丁寧さや、その地域・戸建ての売却実績もあわせて確認しましょう。
査定額は「売れる保証の額」ではなく、あくまで「売り出しの目安」だという点も押さえておきたいところです。査定前の準備は実家の査定前に確認する6つのことで詳しく解説しています。

STEP5・6|媒介契約から引き渡しまで

依頼する会社を決めたら媒介契約を結び、広告や内見対応を進めます。買主が決まれば、売買契約・決済・引き渡しへと進みます。

空き家は生活感がないぶん、内見の印象が意外と大切。残置物が多い場合は、先に家財整理を済ませておくと評価が上がりやすくなります。
媒介契約から引き渡しまでは、一般に3〜6か月程度。遠方で立ち会いが難しいときは、鍵の預け方や現地対応を不動産会社と事前に決めておくと安心です。

STEP7|売却後の税金と、譲渡所得税の計算

売却益(譲渡所得)が出た場合は、翌年に譲渡所得税の確定申告が必要です。
ここで大事なのは、税金がかかるのは「売却価格そのもの」ではないということ。譲渡所得は、次の式で計算します。

課税譲渡所得 = 譲渡価額 −(取得費 + 譲渡費用)− 特別控除

  • 取得費:親がその家を買ったときの価格や建築費(建物は減価償却後)。相続した不動産は、親の取得時期・取得費を引き継ぎます。取得費が不明なら「譲渡価額の5%」を概算取得費として使えます。
  • 譲渡費用:仲介手数料、印紙代、解体費、測量費など、売却にかかった費用。
  • 特別控除:要件を満たせば、下記の特例で最大3,000万円を差し引けます。

税率は所有期間で変わります。相続の場合は親の取得日を引き継ぐため、多くは「長期」に当てはまります。

区分所有期間(親の取得日から)税率(所得税+復興+住民税)
長期譲渡所得5年超20.315%
短期譲渡所得5年以下39.63%

使える2つの特例

  • 相続空き家の3,000万円特別控除:一定の要件(例:1981年5月31日以前の建築、区分所有でない、相続開始から3年を経過する年の12月31日までに売却、譲渡価額1億円以下、耐震改修または取り壊し等)を満たすと、譲渡所得から最大3,000万円を控除。※2024年以降、相続人が3人以上の場合は一人あたり2,000万円が上限。
  • 取得費加算の特例:相続税の申告期限の翌日から3年以内(=相続開始から約3年10か月以内)に売却すると、支払った相続税の一部を取得費に加算でき、譲渡所得税を軽減できる。

計算例(相続空き家の3,000万円控除を使う場合)

イメージをつかむために、簡単な例で見てみましょう。
築45年の実家を1,800万円で売却し、取得費は不明で概算取得費(1,800万円×5%=90万円)、譲渡費用(仲介手数料など)が70万円だったとします。

  • 譲渡所得=1,800万円 −(90万円+70万円)=1,640万円
  • 3,000万円特別控除を適用すると、1,640万円 − 3,000万円 < 0 → 課税譲渡所得は0円(譲渡所得税はかからない)

このように、要件を満たして特例が使えれば、税負担を大きく抑えられます。
ただし特例は要件が細かく、併用の可否や有利・不利も個別の判断になります。特別控除で税額が0になる場合でも確定申告は必要なので、使えそうなら必ず事前に税理士へ相談しておきましょう

売却でかかる主な費用

費用項目目安
仲介手数料売却価格×3%+6万円+消費税(400万円超の場合の上限)
相続登記費用登録免許税(評価額×0.4%)+司法書士報酬(数万円〜十数万円)
印紙税売買契約書に貼付(契約金額により数千円〜数万円)
測量・境界確定費境界があいまいな場合に数十万円かかることも
家財整理・解体費残置物の撤去や、更地にする場合の解体費
譲渡所得税・住民税売却益に対して課税(特例で軽減できる場合あり)

金額はいずれも目安で、仲介手数料は法律で上限が定められています。
家財整理や解体まで含めた実家じまい全体の費用は、実家じまいにかかる費用の目安で整理しています。

売却前チェックリスト

  • 遺言書の有無を確認した
  • 相続人を戸籍で確定した(把握もれがない)
  • 遺産分割協議で「誰が相続し、どう分けるか」が決まっている
  • 相続登記で名義を相続人に変えた(または進行中)
  • 複数社の査定で相場を把握した
  • 残置物・家財整理の段取りを決めた
  • 使える税の特例(3,000万円控除・取得費加算)を税理士に確認した

つまずきやすいポイント

  • 残置物:家財が残ったままだと売りにくい。遺品整理・家財整理を先に。
  • 境界未確定:土地の境界があいまいだと、売却時に測量が必要になることがある。
  • 共有名義:相続人全員の同意がないと売れない。方針の共有を早めに。
  • 特例の期限切れ:3,000万円控除や取得費加算には期限がある。使うつもりなら逆算して動く。

相続・片付け・売却のどれから動くべきかは、名義や家族の状況で変わります。自分のケースの進め方は、下の診断で確かめられます。

よくある質問

Q. 相続した家は親名義のままでも売れますか?

A. 売れません。売却できるのは名義人だけなので、先に相続登記で相続人へ名義を変える必要があります。なお、査定を取ること自体は名義変更前でも可能です。

Q. 相続した実家はいつまでに売ればよいですか?

A. 売却そのものに期限はありませんが、税の特例には期限があります。相続空き家の3,000万円特別控除は「相続開始から3年を経過する年の12月31日まで」、取得費加算の特例は「相続開始から約3年10か月以内」の売却が条件。特例を使うなら、早めに動くほど有利です。

Q. 譲渡所得税はいくらくらいかかりますか?

A. 「(売却価格 −(取得費+譲渡費用)− 特別控除)× 税率」で決まります。相続で取得した家は多くが長期譲渡(税率20.315%)に当てはまり、3,000万円特別控除が使えれば課税額が0になるケースもあります。取得費が不明なら、売却価格の5%を概算取得費として計算しましょう。正確な額は税理士に確認するのが安心です。

Q. 相続登記は自分でできますか?

A. 自分で行うことも可能ですが、戸籍収集や書類作成はなかなか煩雑です。相続人が多い、不動産が複数あるなど複雑なケースでは、司法書士に依頼するのが現実的でしょう。

参考にした公的情報

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※ 本記事は一般的な情報です。相続登記・税制の要件や税率は個別事情や制度改正により異なります。譲渡所得税の計算や特例の適用可否など、具体的な判断は司法書士・税理士など専門家にご確認ください。

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この記事を書いた人

実家じまいや親の家の売却・相続・遺品整理など、はじめての方が迷いやすいテーマをわかりやすく整理してお届けする編集部です。何から始めればよいのかを順序立ててご案内します。

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